三國屋善五郎 茶楽依倶楽部 コミュニティペーパー

みてくだ茶い

2007年
4月

『新茶物語』

一番嬉しい季節

いよいよ新茶を味わえる季節がやって来ましたね。お茶好きにとっては一年で一番嬉しい季節です。特に新茶だけが持っているあの若々しい鮮度感のある風味は「日本人に生まれて良かった!」と思わせる独特なものだと思います。

頬をつたったひとしずくの涙

話は変わりますが、皆さんには新茶にまつわる思い出とかはありますか?
 何年か前、あるお客様からとても心温まるお話を聞かせていただいた事があります。20代の女性の方でした。その方は10代の頃、とてもお母さんに反発していたそうです。顔を合わせればけんかばかり。顔を見るのも嫌だったと。でも、社会に出て人間的にも少しづつ成長していく中で、自然とお母さんとも話しをするようになっていったんだそうです。そんなある日、たまたまショッピングをしている時に「新茶」の文字が目に入ってきて、なんとなく「新茶でも買って美味しいお菓子を食べよう」と思ったそうです。家に帰ってお母さんにも「一緒に新茶を飲まない?」と声をかけて飲んだそうです。その時、ふっとお母さんの顔を見ると「スッ~」と涙がひとしずく頬をつたったそうです。びっくりしたその方は「お母さんどうしたの。何かあったの!!」と聞いたそうです。するとお母さんが「初めてあなたに新茶を淹れてもらった。お茶ってこんなに美味しかったのね。」と…。
 その方は今まで母親から色々な事をしてもらってばかりで、それが当り前だと思っていて、なんの感謝もしていなかった事を反省し、そして、こんなささやかな事でも涙を流してくれる温かいお母さんの心にふれ、お母さんの深い愛情に自分もまた泣いてしまったという話しを聞かせていただきました。

 その話しを聞いて、自分も目頭が熱くなったのをおぼえています。自分達が一生懸命作った新茶で、こんな素敵な物語が生まれるんだと思うとお茶屋に生まれて本当に良かったと思います。新茶を飲む時もそうですが、新茶を作る時にも様々な物語が生まれています。私は生産家から毎年話しをうかがうのがとても楽しみです。いったい今年はどんなドラマがあったのか、どんな感動があったのか、どんな苦労があったのか。

もうすぐ「母の日」。今年の母の日に新茶でふたりの物語を作っていただけたらこんなに嬉しい事はありません。
毎月発行『みてくだ茶い』

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